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事例紹介
事例 Dさん.50歳代,女性.
人間ドックで大腸がん,肝転移を疑われ,精査の結果,大腸がん(Stage Ⅳ),多発肝転移と診断された.腹腔鏡下結腸右半切除術および,術後化学療法が施行された.mFOLFOX6+ベバシズマブ(アバスチン®)療法4コース,FOLFIRI+ラムシルマブ(サイラムザ®)療法9コース,レゴラフェニブ(スチバーガ®)療法2コースが実施されたが,肝転移の増大,肺転移が認められ中止となった.化学療法中止から2週間後,肝転移に伴う胆道閉塞による,閉塞性黄疸(T-Bil 11.15 mg/dL),胆管炎と診断され,胆管ステント挿入目的で1週間の予定で入院となった.入院翌日,胆管ステントが挿入された.胆管ステント挿入翌日には,T-Bil(5.67 mg/dL)と低下した.
苦痛のスクリーニングの結果と患者の苦痛
Dさんの苦痛のスクリーニング結果を表1に示す.
入院7日目に訪問した際の症状評価は以下のようであった.疼痛部位は,腰部,背部であり,動作時に疼痛が出現し,NRS 7となる.30分ほど臥位になると痛みが落ち着いて,NRS 1であった.鎮痛薬は,トラムセット®配合薬を1日4回定期内服し,疼痛時はトラマドール塩酸塩(トラマール®)25 mg 1錠を内服していた.疼痛の原因としては,肝臓を包む皮膜の伸展に関連した内臓痛とアセスメントした.
訪問するためにカルテを遡ると,入院時より,苦痛を抱えていたことがわかった.
入院時の状況は,腰部,背部の痛みがあり,安静時,動作時ともにNRS 5であった.倦怠感はないと話しているが,1日の多くを臥床して過ごしていたことから,倦怠感は弱いと病棟看護師は判断した.腹部膨満感はない.
入院4日目,右側腹部の痛みがあり,動作時NRS 4.安静時はNRS 1.倦怠感があり,臥床して過ごしていた.前日の夕食時から,食べたものが心窩部で詰まるような感覚があり,食事摂取量は5割程度にとどまっていた.前日から,腹部膨満感はないが,排便がなく,倦怠感と疼痛があるため,自宅への退院が不安だと話していた.痛みに伴い,睡眠,飲食に支障があった.
飲食については,心窩部の詰まるような感じを痛みとして病棟看護師は判断していた.
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