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はじめに
がん対策基本法第十五条において,緩和ケアは,「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療,看護その他の行為」と定義されており,また同法第十七条において,「緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること」と規定されている.法律で言葉の定義とその推進が位置づけられるのは,世界の中でもめずらしく,日本の取り組みは注目を浴びている.
緩和ケアの歴史を振り返ると,シシリー・ソンダースが,1967年に,聖クリストファー病院にホスピス病棟を開設したことを機に,現在は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)が進めるUniversal Health Coverage (UHC)にも緩和ケアが含まれたことで,世界中で等しく緩和ケアが受けられるように各国において行政・立法施策を推進している.日本においては,がん対策基本法のもと,2007年より定期的に策定されているがん対策推進基本計画によって,緩和ケアに関する施策が推進されてきているが,いまだ苦痛を抱える患者が数多くいることが指摘されている.2014年には,がん診療連携拠点病院等の整備指針の中に,緩和ケアに関する苦痛のスクリーニングが,指定要件として定められ,日本中でがん患者に対する苦痛のスクリーニングが実施されることとなったが,実際の取り組みにおいては病院ごとの格差があることなどが指摘されているところであり,いまだ真に有効なスクリーニングについては議論のあるところである.本稿においては,これまでの緩和ケアや苦痛のスクリーニングの歴史・医療提供体制の変遷を振り返りながら,苦痛のスクリーニングにおける課題に触れたい.
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