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2014年から「がん患者の身体的苦痛や精神心理的苦痛,社会的苦痛等のスクリーニングを診断時から外来及び病棟にて行うこと.また,院内で一貫したスクリーニング手法を活用すること.」(以下,苦痛スクリーニング)が,がん診療連携拠点病院の指定要件1)の一つとなりました.それをうけて,各施設がそれぞれの病院の特徴をふまえて,さまざまな工夫をしながら,苦痛スクリーニングの実施に取り組んでいます.
また,2018年7月に公表されたがん診療連携拠点病院の新要件2)では,苦痛スクリーニングは『緩和ケアの提供体制』から『集学的治療等の提供体制及び標準的治療等の提供』の項目に変更され,がん診療に携わる全医療者が行うべきものと位置づけられました.しかしまだまだ,「苦痛スクリーニングは,緩和ケアチームなどの専門家が行うもの」というイメージがあり,病院全体で組織として取り組むことができている施設ばかりではない現状があります.
苦痛スクリーニングとは,文字どおりにとらえると,患者が抱える苦痛やつらさを医療者の眼で確認し,ケア(医療的介入)の必要性を選別することです.その際に活用される苦痛スクリーニング票(用紙)は,あくまでも患者が抱える苦痛やつらさを医療者に伝えるためのツールにすぎません.こうしたツールが院内で導入されると,陥りがちな問題として「スクリーニングを行うこと自体が目的となってしまう」ことがあります.
患者は,苦痛やつらさがあることを医療者に伝えてもそれに対応がされなければ,医療者に不信感や不満感を抱きかねません.苦痛スクリーニングを用いて患者から表出された苦痛に,医療者が対応すること,つまり『患者ケアにつなげること』が重要なのです.
その対応についてむずかしく考える必要はありません.苦痛スクリーニングに記載された患者の苦痛やつらさについて,医療者が耳を傾け,それを和らげる方策について一緒に話し合うためのコミュニケーションツールと考えてみてはいかがでしょうか.
そこで,本特集では「苦痛スクリーニングからいかに患者ケアにつなげるか」に焦点をあてて,がん専門病院や大学病院,一般総合病院などのいくつかの施設にお願いし,苦痛クリーニングのシステム構築にどのように取り組み,定着に向けてどのような課題を抱え,どのように工夫しているかを紹介いただきました.また,実際の活用についても,具体的な事例を用いて患者ケアにどのようにつなげているかを解説していただきました.
本特集が,皆さまの施設での「患者の苦痛に全医療者で対応する体制づくり」に役立ち,苦痛スクリーニングを患者ケアにつなげるための助けとなり,ひいては患者のQOLの向上につなげることができれば幸いです.
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