第Ⅲ章 各論:がん治療とエビデンス がん治療の最新エビデンス
薬物療法
野﨑 由美
1
,
山口 茂夫
1
,
加藤 俊介
1
1順天堂大学医学部腫瘍内科学研究室
pp.147-150
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_147
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がんに対して最初に化学療法が行われたのは,1940年代に放射線治療に抵抗性となった非ホジキンリンパ腫患者においてナイトロジェンマスタードを用いたことから始まっている.ナイトロジェンマスタードは第一次世界大戦後に化学兵器として改良されたものだが,大量のマスタードガスが積まれた輸送船が爆撃を受け,被爆した兵士に骨髄抑制が起きたことから造血器腫瘍の治療応用に関する研究が進んだ.
その後,さまざまなアルキル化薬,白金製剤,代謝拮抗薬などの殺細胞性抗がん薬が開発され,併用療法も発展してきたが,分子標的治療薬の登場により化学療法の進歩はますます加速し,生存期間はさらに延長してきている.一方で,副作用もまた多岐にわたり,治療効果を高めるには支持療法やチーム医療の重要性も増してきている.
本稿では新たな薬剤を中心とした紹介とともに,治療目的や副作用について概説し,今後の化学療法やゲノム医療 (precision medicine)についても少し触れる.
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