- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
科学的根拠に基づいたがん予防
いまや日本人の2人に1人はがんになる時代である.高齢社会を迎え,もはやがんは他人事ではない,身近に差し迫った問題といえる.がんの原因を知り,できることなら避けたいところであるが,がんの予防をはじめとした健康に関する情報は新聞・テレビ・インターネットなどのメディアを通して日々発信されており,実践に値する予防法を見極めるのは困難であろう.そもそも,生活習慣とがんとの関連についての知識を得たいとき,信頼できる科学的根拠とは何であろうか.それは,「人を対象とした研究で,査読システムのある科学雑誌に論文として掲載されている」もの,すなわち論文になっているエビデンスは,きちんとした仮説の下に研究がなされ,問題点なども討議されていることを示す.単なる専門家の私見や論文発表前の学会発表とはあらゆる点で異なる.しかし,医療関連職の方でも,英語で書かれた科学論文を正しく読み,理解することは現実的には困難であろう.
世界がん研究基金(World Cancer Research Fund:WCRF)は膨大な数の科学論文をレビューして,食物を主とするがんのリスク要因・予防要因を評価する作業を実施し,その結果を随時更新してWebサイトで公開している(表1).しかしながら,この報告書では,主に欧米の研究結果が根拠となっていることから,われわれ日本人にそのまま適用できるかどうか,疑問が残る.たとえば,リスク要因として肥満,内臓脂肪,高身長,および体重増加といった体格に関する要因が目立つ.しかし欧米とは肥満度の分布が大きく異なる日本においては,ここまで体格要因が寄与しているかは疑問である.また,広東式塩蔵魚やマテ茶など,日本においてほとんど飲食しない品目も挙がっている.やはりわれわれ日本人には,日本人を対象とした研究を基盤とした日本人のためのがん予防のエビデンスが必要である.
© Nankodo Co., Ltd., 2019