特集 がん対策・1
がん予防の推進
1.生活習慣改善によるがん予防の可能性
津金 昌一郎
1
1国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部
pp.16-21
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100313
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がん予防の可能性
がんの発生予防がどの程度可能であるかを知るには,歴史的な経緯や移民における変化が参考になる.日本の胃がんの年齢調整罹患率と死亡率を男女各々についてプロットしてみると,データが利用可能な1975年以降,罹患率は一貫して減少傾向にあり,その結果として,死亡率も平行して減少傾向にあることがわかる(図1左).このような胃がん罹患率と死亡率の減少傾向は,日本のみならず米国においても同様であり(図1右),かつては胃がんは頻度の多いがんの1つであったものが,現在では,稀ながんになりつつある.
この傾向は,さらにEU諸国においても同様で,1950年代に最も頻度の多かった胃がん死亡率は減少の一途をたどっており,年齢調整死亡率は現在では男女共に1/3以下になっている.米国やEU諸国では,胃がん検診は実施されておらず,また,胃がんの5年生存率も低いままである.また,ヘリコバクター・ピロリ菌の医療としての除菌が実施されてきた訳でもない.
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