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特集 消化器良性疾患に対する外科治療update
I. 上部消化管
2.食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術―粘膜下層内視鏡への展開
Per-oral endoscopic myotomy for esophageal achalasia:its extension to submucosal endoscopy
井上 晴洋
1
H. Inoue
1
1昭和大学江東豊洲病院消化器センター
キーワード:
食道アカラシア
,
POEM
,
経口内視鏡的筋層切開術
,
粘膜下層内視鏡
,
胃不全麻痺
Keyword:
食道アカラシア
,
POEM
,
経口内視鏡的筋層切開術
,
粘膜下層内視鏡
,
胃不全麻痺
pp.309-314
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_geka86_309
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経口内視鏡的筋層切開術(POEM)は,アカラシアに対する治療法であり,2008年に世界第一例が本邦で施行されて以来15年以上が経過した.昭和大学のみで3,100例超が施行されており,日本全体で6,000例以上に施行されている.日本での成功率は97%を超える.国際的にも,Heller-Dor手術とのランダム化比較試験(RCT)において,その効果は外科手術と同等以上であることが示された.またバルーン拡張術とのRCTでは,POEMの優位性が証明された.この二つのRCTの結果に基づき,POEMはアカラシアに対する標準治療,そして第一選択の治療となった.さらにPOEMとHeller-Dor手術を比較した場合に,筋層切開を食道側に容易に延長できるという決定的な長所があり,体表に傷がないという利点もある.特にChicago分類のtypeⅢにおいては,特にPOEMが第一選択となる.技術的にはdouble scope techniqueにより胃側の筋層切開を2 cmとすることで,incomplete myotomyとpost-POEM GERD(POEM後の胃食道逆流症)の両方を防げる.また,POEMは粘膜下層内視鏡(submucosal endoscopy)という領域を確立し,食道粘膜下腫瘍に対する経口内視鏡的粘膜下腫瘍切除術(POET)やZenker憩室に対するZ-POEM(POES)や傍横隔膜憩室,胃不全麻痺に対するG-POEM(gastric POEM)など,新しい治療内視鏡手技を生んだ.
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