書評
「なぜなんだろう?」を考えた外科医の生活
石沢 武彰
1
1大阪公立大学肝胆膵外科
pp.144
発行日 2023年2月1日
Published Date 2023/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_geka85_144
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- 文献概要
本学は「素直な学生」が多いのが自慢である.臨床実習の最終日には「そつなく」受け持ち症例をプレゼンしてくれる.ところが,「何か疑問点は」,「本当に今回の手術でよかったのかね」と問うと,「“豆鉄砲を食らった鳩”とは,きっとこんな感じであろう」という表情をみせる学生の何と多いことか….私はおおいに不満であり,心配である.現在,医療系大学間共用試験(OSCE)などをとおして,医師として標準的な技量と態度を備えることが学生と教員の共通目標となっているが,彼らが臨床の荒波を生き抜いて「一人前」になるために,標準的「でない」ポイントに気づく洞察力,自分や上司の診療行為にさえ「なぜそれがよいのか,本当にベストであったか」と問える自己批評力こそを習得してほしいからである.手術にも同じ傾向を感じる.「標準化」,「定型化」が重視され,そのテクニックを動画で学べる時代である.しかし,若い先生方は「なぜその方法が推奨されるのか」という理屈を理解しているであろうか.自分なりの疑問をもちながら手技をマスターしないと,手術室で日々発生する「応用問題」をうまく解けないと思うのである.
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