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は じ め に
びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)は,脊椎前縦靱帯の骨化・増殖を主徴とし,しばしば末梢の付着部炎を伴う疾患である.DISHの有病率は報告により大きな隔たりがあり,50歳以上のアジア人集団で2.9%1),65歳以上の欧州人男性では42.0%2)に達するとの報告もある.危険因子としては,高齢,男性に加え,肥満,高血圧,2型糖尿病といったメタボリックシンドローム関連因子の関与が知られている3).DISHの診断には一般的にResnickらによるX線診断基準が用いられる4).具体的には,① 少なくとも連続4椎体以上の前外側面における隆起を伴うなだらかな骨化,② 椎間板高の維持,③ 椎間関節の骨性強直や仙腸関節(sacroiliac joint:SIJ)における骨びらん・硬化性変化・骨癒合の欠如を満たすことと定義されている4).
一方,鑑別を要する重要な疾患群として脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)があげられる.SpAは,主にSIJや脊椎の付着部における慢性炎症を特徴とし,HLA-B27抗原との強い関連性が知られている5).強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)はSpAの代表的疾患であり,DISHと同様に重度の脊椎強直をきたしうるが,その病態は大きく異なる.ASの有病率は0.03~1.8%6)とDISHに比してまれであり,発症年齢もDISHが高齢者に好発するのに対し,ASは通常20~30歳代の若年層に発症し,40歳以降の発症はまれである5).ASの診断には改訂New York基準(modified New York-criteria)が広く用いられ7),臨床症状に加え,X線像上の仙腸関節炎(両側性grade 2以上,または片側性grade 3~4)が診断の根幹となる.
これら二つの疾患は,ともに脊椎の広範な強直を呈することから,時に鑑別が困難となる.DISHとASでは,病態,好発年齢,予後,そして治療法(ASでは生物学的製剤の適応など)がまったく異なるため,両者の正確な鑑別診断はきわめて重要である.Resnick基準および改訂New York基準はいずれもX線像に基づく診断基準であり,早期診断や詳細な病態評価には限界がある.近年,脊椎CT撮影技術の進歩により,骨化や関節病変の微細な評価が可能となった.筆者らは,全脊椎CTを用いてDISHとASの放射線学的特徴を詳細に比較・検討してきた9,10).本稿では,これらの研究成果と従来の知見に基づき,「脊椎における骨化の分布と形態」,「SIJ・椎間関節病変」,そして「矢状面アライメント」の三つの観点から,DISHとASの鑑別点について詳述する.

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