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は じ め に
大腿骨頭壊死症(osteonecrosis of the femoral head:ONFH)は,大腿骨頭の血流が障害されることで無菌性壊死をきたし,骨頭の圧潰および関節機能の喪失にいたる進行性かつ難治性の疾患である1).ステロイド大量投与やアルコール多飲が主要な関連因子として知られ,本邦においても中高年の労働世代を中心に発症することが多い2,3).多くの症例では,発症初期は無症状または軽度の疼痛にとどまるが,骨頭圧潰が進行すると歩行障害や著明な日常生活動作(ADL)低下を引き起こす.
本邦では,診断後9ヵ月以内に半数以上の患者が手術を受けると報告されており4),自然経過による寛解が期待できない症例が多い.特に壊死範囲が比較的小さい厚生労働省特定疾患・特発性大腿骨頭壊死症調査研究班の分類のtype AおよびBでは,圧潰率が比較的低く,壊死範囲が大きいtype C1では圧潰率が13~26%,C2では50~86%と報告されており,早期より疼痛や可動域制限が強く,手術療法が必要となる可能性が高い5~8).治療方法はONFHのtypeやstage,年齢,活動性,患者の希望などを総合的に判断して決定される.保存療法に限界がある場合には手術療法が行われるが,関節温存手術として大腿骨頭回転骨切り術や内反骨切りなどの骨切り手術,あるいは骨移植を併用したcore decompressionなどが行われる9~11).一方,関節破壊が進行し疼痛や機能障害が高度な場合には,人工股関節全置換術(THA)または人工骨頭置換術(bipolar hemiarthroplasty:BHA)が選択される.THAは疼痛緩和と機能回復において高い効果を示すが,若年例ではインプラントの耐用年数の問題があるため,再置換を見越した長期的な戦略が求められる.
本邦においては,ONFHに対する治療法の推移や術式別の合併症の比較に関する報告は限られており,大規模データベースを用いた疫学的解析が求められている.本稿では,診療群分類包括評価(Diagnosis Procedure Combination:DPC)データを用いてONFHの治療方法の推移と傾向,術式別による合併症について解析し報告する.

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