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は じ め に
人工関節置換術における術後合併症は多岐にわたるが,そのなかでも治療に難渋する病態の一つが人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)である.PJIはいったん発症すると,バイオフィルムが金属インプラント表面に形成される特性から,治療に難渋しやすいだけでなく再燃のリスクが常に存在する.近年ではPJIに罹患することにより,死亡率が上昇するといった報告も散見されるようになった1,2).不運にもPJIを発症した場合には,インプラントの抜去を余儀なくされることが決してまれではなく,患者・医療者ともに大きな負担を強いられる.したがって,われわれ整形外科医は,PJIの発症をできる限り予防する取り組みが求められる.
PJIを予防するためには,患者側因子と術者側因子に分類して対策を講じる必要がある.2018年に米国で開催された第2回International Consensus Meeting(ICM)において,PJIの予防について幅広く議論されており,きわめて多くの内容が推奨に盛り込まれている3).われわれ整形外科医が直接介入しやすいのは術者側因子であり,術者側因子は手術室環境・手術機材・術中洗浄液・手術時間・術後創傷管理などきわめて多岐にわたる.そのなかでも,手術機材においては,インプラントを体内に恒久的に挿入するという整形外科手術の特性上,インプラントクオリティを上昇させることがPJIを予防するための至上命題とされてきた.
本稿では,PJI予防のなかでも,整形外科インプラントに対する抗菌処理に焦点をあてつつ,昨今の抗菌インプラントの特徴や臨床成績などを近年の文献を交えながら概説したい.
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