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は じ め に
日本は2010年に超高齢社会に突入し,いまだかつて人類が経験したことのない高齢化に直面している.2016年の調査によると,介護が必要となった原因の10.8%を占めるのは,骨折・転倒である1).そのようななかで,骨粗鬆症の発見および治療は重要となってくる.しかしながら,日本における骨粗鬆症治療の問題点は多い.まずは,治療対象者の多くが未治療であるという問題がある.人口より推察される骨粗鬆症患者は男性300万人,女性980万人といわれるが2),実際の治療人数との間には大きな開きがある.さらに,治療継続率が低いという問題がある.大腿骨近位部骨折のような明確な骨折後であっても,1年後の治療継続率は約18.7%であり,53.3%は未治療である3).すなわち,骨粗鬆症は「見つけられておらず,治療は続かず,再骨折の予防はされていない」ということになる.このような問題点を打開すべく,日本骨粗鬆症学会が制定した骨粗鬆症の啓発・予防・診断・治療に対する包括的診療支援システムが,骨粗鬆症リエゾンサービス(osteoporosis liaison service:OLS)である.リエゾンとは「連絡係」と訳され,診療におけるコーディネーターの役割を意味する.
そして,OLSの担い手として推奨されている制度が,「骨粗鬆症学会認定医」(医師)および「骨粗鬆症マネージャー」(看護師,理学療法士,管理栄養士,薬剤師,診療放射線技師など)である.2019年4月の時点で,骨粗鬆症マネージャーは3,061名が認定されている4).これらの有資格者が,チームを組み患者の包括的な治療に当たることが推奨されている.多職種が連携して,治療する一つの指針として,簡易評価表「OLS-7」が策定されている5).OLS-7の項目では,骨折リスクの評価,栄養状態の評価,運動転倒リスクの評価,服薬状況の評価,生活の質(quality of life:QOL)・日常生活動作(activities of daily living:ADL)の評価,データベースについて記載がされている.そのなかでも,栄養指導,運動指導,服薬指導については,特に多職種連携が生かされるジャンルである.次項より当院で実際に取り組んでいるOLSについて具体的に述べていきたい.
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