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は じ め に
日本の骨粗鬆症患者数は1,280万人と推定されており1),骨粗鬆症に関連した大腿骨頚部骨折の2012年新規発生患者推定数は175,700人で,1987年の初回調査時の3.3倍に増加している2).脆弱性骨折の既往はその後の骨折リスクを約2~4倍高めることが知られており3),Haginoらも4)大腿骨近位部骨折の既往のある65歳以上の女性では,二次骨折リスクが4倍高かったと報告している.筆者らの調査では5),2015年に当院救急外来を受診した脆弱性骨折患者のうち,約20.2%に脆弱性骨折の既往を認め,Mitchell6)は大腿骨近位部骨折の半数は脆弱性骨折の既往のある患者から発生すると述べており,骨粗鬆症による脆弱性骨折の再発予防は重要な課題である.
しかし,日本における骨粗鬆症治療率は約20~30%程度と低いことが知られている.Haginoらは4),初回大腿骨近位部骨折後のアンケート調査で,骨粗鬆症薬処方率は18.7%,1年間治療を受けていなかった患者が53.3%あったと報告した.当院における2015年の調査でも5),脆弱性骨折で当院救急外来を受診した患者の骨粗鬆症治療率は15.0%,脆弱性骨折既往者であっても11.4%と低水準であることが判明した.そこでわれわれは,骨粗鬆症治療率の改善は急務と考え,骨粗鬆症リエゾンサービスに注目し,2016年10月に再骨折予防を目的とした島根大学骨粗鬆症リエゾンチームを発足した(図1)[活動内容が再骨折予防であるため本来は骨折予防リエゾンサービスという表現が適当であるが,今後予防的な活動にも発展することを想定し,「骨粗鬆症リエゾンチーム」と命名した].そして,リエゾン活動を網羅的に確実に実行していくためのツールとして,新潟リハビリテーション病院作成の手帳7)を参考に,地域で活用できる「再骨折予防手帳」を作成し(図2),Osteoporosis Liaison Service-7(OLS7)に準拠したリエゾン活動の普及を開始した.しかし,後方支援病院の多くは骨粗鬆症リエゾン活動が開始できておらず,また当院のリエゾン活動の広報不足などもあり,当院でスタートした再骨折予防の取り組みがうまく引き継がれない状況があった.
本研究の目的は,当院との連携病院に骨粗鬆症リエゾン組織を設立し,当医療圏域(出雲)全体で再骨折予防のための集学的な取り組みを開始することである.
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