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はじめに
80歳以上の人口が1,000万人を超え(2015年9月),脆弱性骨折が及ぼす疾病負荷の増大が見込まれている.骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture:OVF)の10万人年あたりの発生率は65〜69歳男性で0.2千人,女性で0.3千人,70〜74歳男性で0.5千人,女性では1.1千人,75〜79歳男性で0.8千人,女性で2.2千人,80〜84歳男性で1.2千人,女性で3.2千人と年齢を追うごとに増加を認める27).有病率は2015年の人口構成で半定量的評価法にてGrade 1以上が1,460万人と推定されている6).椎体骨折患者の推移であるが,1989〜1991年と2009〜2011年で骨折の傾向を分析した報告では,股関節周囲骨折の年齢調整発生率は25%減少しているのに対して,OVFは47%増加している.他国のレヴュー4)でも,股関節の骨折は減少(日本では増加)しているのに対してOVFは増加している.増加の1つの要因として検査精度の向上が挙げられるが,骨粗鬆症の治療体系がうまく機能していない可能性がある.米国のデータベースを使用した研究では,OVF後の1年間に骨粗鬆症薬を投与されていたのは28.8%であったと報告されている12).われわれがOVF発症者を対象に行った研究でも,骨粗鬆症の基準を満たす患者に骨粗鬆症薬が投与されている割合は2割程度であった.高血圧の治療のように,骨粗鬆症の治療を徹底することにより患者の発生を抑制することが重要である.
一方で,OVF発生後の治療については画一化された最適な方法があるわけではなく,いまだにエビデンスを蓄積している途上である.特に80歳以上では保存治療が主体となり,保存治療抵抗例に対して観血的治療が選択される.保存治療では装具,安静,運動療法,薬物治療に関して,観血的治療ではどのような適応でどのような手術をするかに関して,さまざまな報告があるため,私見を交えてまとめたい.
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