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は じ め に
痛みは病の徴候,愁訴としてもっとも多く,高齢化社会に伴い治療へのニーズが高まりつつあり,米国議会では2001年からの10年間を「痛みの10年」と宣言した.2003年には,米国での痛みによる労働生産力損失の推計額は年間約9兆円とも試算されている.わが国における腰痛・関節痛の生涯罹患率は85~90%とされ,2013年における厚生労働省の国民生活基礎調査の結果によると,有訴者率の男性の1位が腰痛,2位が肩こり,女性の1位が肩こり,2位が腰痛,3位が関節痛となっており,腰痛,関節痛などの運動器の痛みがわが国の国民愁訴の上位を占めている.近年,わが国における高齢化は急激に進行し,加齢による腰痛・関節痛患者が増加しており,その中には慢性化し,難治性疼痛となっている症例も少なからず存在する.日本の総人口のうち約13%がなんらかの慢性痛をもっているとの報告もされている.さらに,高齢者の増加に伴い,腰部脊柱管狭窄症による機能障害が問題となっている1).
近年,水分子の移動を強調し画像化するMRI拡散強調画像(diffusion tensor imaging:DTI)が用いられている.拡散の大きさの指標としてapparent diffusion coefficient(ADC)値および拡散異方性の強さを示す指標としてfractional anisotropy(FA)値が用いられ,脳梗塞の診断において必要不可欠である2).これまで,脊柱管内病変は形態的な評価が主であり,定量的な指標の報告は皆無であった(図1).われわれは,過去に腰部脊柱管内ADC値が腰部脊柱管狭窄症患者において低下することを世界で初めて報告した.本研究の目的は,腰部脊柱管狭窄症の他覚的,定量的な指標としての,腰部脊柱管内ADC値およびFA値の妥当性を検証することである.
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