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は じ め に
変形性関節症(osteoarthritis:OA)は,関節軟骨に対する力学的負荷の繰り返しと蓄積により,軟骨の変性,破壊,また骨の増殖性変化を生じる疾患である.一方で,OAにおいては,軟骨以外にも滑膜炎,骨髄,軟骨下骨の変化などさまざまな関節構成体の変化が関与することが知られている.特に軟骨下骨は,関節軟骨の恒常性維持に重要な役割を担っていると考えられ,OAの発症早期から軟骨下骨のリモデリングや代謝変化がすでに存在すると考えられている.これまで軟骨変性と軟骨下骨変化のどちらが先行して起こるかがしばしば議論されてきたが,軟骨および骨の代謝異常が比較的早期から相互に関係しながら関節の破壊が進むという考え方が認識されつつある.
変形性股関節症(股関節OA)は,一次性股関節症,また寛骨臼形成不全を主な原因とする二次性股関節症に分類される.双方とも加齢による関節軟骨の退行変性や過負荷に起因し,関節軟骨が変性,磨耗し発症すると考えられているが,股関節OAにおいては関節軟骨と軟骨下骨との関連などその病態は明らかではない.
これまで,ヒトin vivo骨梁構造解析に関する報告は生検標本による研究がほとんどであったが,近年,三次元デジタルCTデータによる骨梁構造解析についての研究が散見されるようになり,骨梁構造解析による骨質診断の有用性が示されるようになっている1,2).マルチスライスCT(multi-detector row CT:MDCT)は,多列の検出器を有する臨床用CTであり,短時間で高解像度の画像を得ることが可能となり,骨梁構造の詳細な解析が可能となった.現在までに,骨粗鬆症患者の脊椎の骨梁構造の解析や,薬剤の治療効果判定に用いられている3,4).
一方,関節軟骨の評価においてMRIはOAや炎症性疾患による軟骨基質の変性や組成変化も信号変化として描出できるようになっている.この変性過程において,プロテオグリカンの減少やコラーゲン配列の乱れを信号変化としてとらえようという試みがなされ,関節軟骨の細胞外マトリックスの量や構造など質的評価が可能な撮像法が開発され臨床応用されている.そのうち,T2マッピングは関節軟骨基質内のコラーゲン配列と水分含量が評価可能な撮像法であり,関節軟骨の質的評価が可能であるとされ,これまで股関節領域においても多くの報告がなされている.当科でも軟骨の質的評価の重要性を考慮し,2009年より非造影で撮像シーケンスの入手が比較的容易なT2マッピングを用いて,股関節疾患における軟骨の質的評価,また術後の軟骨評価を行っている5).
本研究では,寛骨臼形成不全を有する股関節OA患者の骨梁構造,関節軟骨をそれぞれMDCT,T2マッピングMRIを用いて定量的に解析し,両者間の関連を評価した.
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