Japanese
English
Lecture
関節軟骨損傷に対する再生治療開発の戦略
Strategies for Developing Regenerative Therapies for Articular Cartilage Damage
妻木 範行
1,2,3
Noriyuki TSUMAKI
1,2,3
1大阪大学大学院医学系研究科組織生化学
2大阪大学大学院生命機能研究科組織生化学
3大阪大学WPIヒューマン・メタバース疾患研究拠点
1Department of Tissue Biochemistry, Graduate School of Medicine, Osaka University
2Department of Tissue Biochemistry, Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University
3Premium Research Institute for Human Metaverse Medicine (WPI-PRIMe), Osaka University
キーワード:
軟骨細胞
,
chondrocyte
,
細胞分化
,
cell differentiation
,
内軟骨性骨化
,
endochondral bone formation
,
軟骨再生
,
関節軟骨
,
articular cartilage
,
人工多能性幹細胞
,
iPS細胞
,
induced pluripotent stem cell
Keyword:
軟骨細胞
,
chondrocyte
,
細胞分化
,
cell differentiation
,
内軟骨性骨化
,
endochondral bone formation
,
軟骨再生
,
関節軟骨
,
articular cartilage
,
人工多能性幹細胞
,
iPS細胞
,
induced pluripotent stem cell
pp.301-306
発行日 2024年3月25日
Published Date 2024/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202923
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はじめに
骨は関節で相対するが,その骨端は関節軟骨で覆われており,双方の関節軟骨が摺動することで滑らかな関節運動が行われている.交通事故や転倒などの外傷で関節軟骨が損傷を受けると,関節運動が障害され,関節可動域の低下・運動時関節痛の原因となる.軟骨は修復能に乏しいことが知られ,軟骨が損傷した状態で関節を使い続けると,損傷部の周辺に軟骨変性が広がり,二次性の変形性関節症(osteoarthritis:OA)へと至ることが少なくない.
軟骨の構造は,軟骨細胞と軟骨細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)で構成される組織である(図1).軟骨細胞が軟骨ECMを作る.健常な軟骨を硝子軟骨と呼び,その軟骨ECMはコラーゲン細線維とプロテオグリカンからなる.軟骨コラーゲン細線維は,Ⅱ,Ⅸ,Ⅺ型コラーゲン分子が会合してできている.軟骨ECMは軟骨のメカニカルな機能(荷重に抗し,潤滑な関節運動を担う)を果たすとともに,軟骨細胞に適切な環境を与えて軟骨細胞の性質を維持する役割を果たす.すなわち,軟骨細胞と軟骨ECMは互いに依存している.軟骨が損傷を受けると損傷部は軟骨細胞とともに軟骨ECMを喪失する.損傷部に軟骨細胞様の細胞が遊走あるいは供給されても,適切な環境がない状態で細胞は軟骨の性質を維持できない.そのため細胞は軟骨ECMを作れず,損傷部は修復されない.ある程度の大きさの損傷部を正常軟骨で修復するためには,細胞だけでなく同時に軟骨ECMも損傷部へ供給する,すなわち軟骨ECMに軟骨細胞が囲まれた軟骨組織の状態で供給する必要がある.
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