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は じ め に
筆者のスポーツドクターとしての活動は東京大学整形外科に入局して3年目から始まった.当時同科の関連病院の一つであった関東労災病院はすでにスポーツ関連で有名で,そこに勤務することになった.同院で関節鏡を習い多くのスポーツ選手の前十字靱帯(ACL)再建術,半月板切除術を行った.また読売サッカークラブのチームドクターになり日本選手権に優勝した.さらにはサッカー日本代表チームのチームドクターとなり,1998年のフランスワールドカップに帯同した.スポーツドクターとしてのトップを極めたわけであるが,そこで中田英寿選手と会った.彼はこのような言葉を漏らした「福ちゃんよ.けがしたところを治療してくれるのはよいが,けがしないような方法を教えてよ」と.筆者にとってこの言葉は衝撃であった.そのときはじめてスポーツドクターは傷害を治すのはもちろん傷害を防ぐのも任務であることを悟った.
折しも2002年のSalt Lakeでのオリンピックで当時のInternational Olympic Committee(IOC)のJacques Rogge医学委員長は「IOC Medical Commissionの役目は競技選手の健康を保つことであり,それは外傷や傷病を予防することを含む」と宣言した.ここに世界的にもスポーツにおける予防医学の重要性が示唆されることとなった.以後スポーツ界における予防医学の重要性は北欧中心に広がり,2005年にはOsloではじめてWorld Congress of Injury Preventionが開かれた(図1).本会はその後IOCが主催することになり,2011年にIOC World Conference on Prevention of Injury & Illness in SportとしてMonacoで,そして2017年もMonacoで第3回大会が開かれた.本会にはスポーツ医学の分野でも予防医学に造詣の深い,Jiri Dvorak,Fredrik S. Bendiksen,Karim Khan,Per Renstromら世界各国の著名な医師が集まってきた.
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