発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009052493
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65歳男性。患者は他院で胃腺癌と肝転移に対し胃幽門部分切除術と肝部分切除術を受けた既往があった。今回、帰宅途中に意識消失発作が生じ、著者らの施設へ救急搬送された。所見では著明な低血糖、低カリウム血症、低総蛋白血症がみられ、あわせて低アルブミン血症、肝機能異常が認められた。内分泌検査ではIRI、Cペプチド、IGF-I、GH、IGFBPは全て低値であったが、IGF-IIの高値であった。一方、内視鏡では残胃胃炎が確認され、CTでは肝臓内に門脈塞栓を伴う多発性腫瘍が認められた。また、患者血清のウエスタンブロットではIGF-IIのほかにbig-IGF-IIバンドが認められ、IGF-II産生胃癌による低血糖(NICTH)に特徴的な所見であった。更にこれらを踏まえて前医の手術標本に対する抗IGF-II抗体の免疫染色では、胃腺癌細胞は胃および肝臓で染色され、肝転移組織で強い染色性が認められた。以上より、本症例に対し低血糖へは経静脈的に糖補充を開始し、hydrocortisone投与が行なわれたが、患者は肝機能の悪化と原因不明の急性腎不全で第14病日目に死亡となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2008