臨床室
野球選手に発生した伴走静脈による肘部管症候群の1例
下江 隆司
1
,
谷口 泰徳
,
浅井 宣樹
,
神藤 一紀
,
吉田 宗人
1和歌山県立医科大学 整形外科
キーワード:
スポーツ障害
,
癒着
,
野球
,
肘部管症候群
,
運動選手
,
上腕静脈
,
癒着剥離術
Keyword:
Tissue Adhesions
,
Baseball
,
Athletic Injuries
,
Cubital Tunnel Syndrome
,
Athletes
pp.1343-1345
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2015090931
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症例は17歳男(野球選手)で、約1年前より右手のしびれと巧緻運動障害が出現し、徐々に増悪した。右肘関節内側に圧痛を認め、肘部管部でTinel徴候が陽性であった。また肘関節屈曲位で右手尺側にしびれが出現し、尺骨神経領域に軽度の感覚障害を認めた。右手はFroment徴候陽性で、環・小指に鷲指変形を認め、握力は左手よりも低下していた。電気生理学的所見は、右尺骨神経に対するinching法で、内側上顆から中枢1.5cmの間でごく軽度の伝達遅延を認めた。X線で異常所見は認めず、右肘部管症候群と診断して手術を施行した。右上腕骨内側上顆を中心に皮膚切開し、Osborne靱帯を切離したところ、その深層に尺骨神経上を斜走する伴走静脈が存在し、怒張して尺骨神経を圧迫していた。伴走静脈を神経から剥離して凝固処理し、Osborne靱帯および屈筋筋膜を十分切除した。術後速やかに症状は改善し、2週後には鷲指変形やしびれが消失して握力も回復した。
©Nankodo Co., Ltd., 2014