発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2010080239
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症例1:61歳男。転落してC5/C6の脱臼骨折を受傷した。骨折型はAllen分類の伸延・屈曲損傷で、Frankel分類Aの完全麻痺、更にはJCS IIの意識障害を認め、軽症の脳挫傷が原因と判断した。その後、意識障害が悪化したため、頭部を用手的に牽引して整復を行ったが、直後のMRIでは小脳全域に高輝度変化を認め、MRAでは両側椎骨動脈は描出が悪く、脳底動脈、後大脳動脈は描出されなかった。血管造影では左右の椎骨動脈は脱臼高位で閉塞・狭窄し、脳底動脈も先端部で閉塞を起こしていた。椎骨動脈損傷に伴う脳底動脈閉塞症により小脳梗塞を併発したと考え、選択的血栓溶解と抗凝固療法を行ったが再開通は得られず、受傷7日目に死亡した。症例2:44歳男。交通事故でC5/C6の脱臼骨折を受傷し、骨折型はAllen分類の伸延・屈曲損傷で、Frankel分類Aの完全麻痺を認めた。用手的に整復を行ったが、受傷12時間後に苦悶の訴えの後、意識障害、呼吸障害が出現した。更に、その12時間後には瞳孔不同が生じ、頭部MRIで小脳・脳幹に高輝度変化を認めた。MRAでは左椎骨動脈の描出が悪く、脳底動脈末梢は描出されなかった。以上より、左椎骨動脈損傷による脳底動脈の閉塞症により小脳・脳幹梗塞を併発したと考えた。脳浮腫が進行し、受傷6日目に死亡した。
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