発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2010036364
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76歳男。左肩関節前方脱臼を受傷し、前医で徒手整復されたが左上肢の腫脹、疼痛が著しく、受傷11日後に肩の痛みの増強、左上肢麻痺が出現し当院紹介受診した。初診時、左肩から上肢、体幹にかけて広範囲に皮下血腫がみられ、造影CTで左腋窩部に直径約7cmの腫瘤があり、内部に2ヶ所造影剤の貯留を認めた。以上より、腋窩仮性動脈瘤による遅発性の腕神経叢麻痺の診断にて緊急手術を施行した。全身麻酔下に仰臥位で左上肢を外転位とし、三角筋、大胸筋間から進入し、小胸筋を烏口突起よりはずして腕神経叢を剥離した。腋窩動脈、神経の癒着は内束、外束から正中神経の分岐の少し遠位でひどく、正中神経は同部で強く癒着していた。腋窩動脈の剥離をすすめたところ、動脈瘤への開口部と思われる部分を認め、開口部を剥離すると径4mmの孔が腋窩動脈にあり、6-0プロリン系で修復した。次に動脈瘤の開口部を広げ、その中の凝血塊を除去した。術後3ヵ月の徒手筋力テストでは上腕三頭筋4、腋橈骨筋2、橈側手根伸筋3-と橈骨神経領域より回復の傾向を認めているが、尺骨神経、正中神経の回復はみられず、知覚障害は残存している。
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