発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2005064340
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74歳男.左手背部腫瘤を主訴とした.左手背第5中手骨上に弾性硬,可動性のない皮下腫瘤を触知したが,手指の運動障害や疼痛などの症状はなく,単純X線,CT検査にて左手部の腫大した軟部組織陰影,遠位橈尺関節の関節症性変化,尺骨頭の背側凸の骨棘形成を認めた.また,MRIのT1強調画像にて筋組織とほぼ等信号,T2強調画像にて低信号を示す領域が存在し,それに反応した皮下組織の浮腫がみられ,腫瘍性病変の疑いで手術を行った.腫瘍は固有小指伸筋腱が変性・膨化したものであり,腫瘍摘出後,遠位の腱を総指伸筋の小指腱に側側吻合して腱移行したところ,術後は良好に経過し左手指の運動制限はみられなかった.病理組織所見では膠原線維と線維芽細胞の増生を認め,病理診断は腱鞘線維腫であったが,臨床的に固有小指伸筋腱の変性断裂と診断した.自験例は固有小指伸筋腱のみの断裂であったが総指伸筋の小指腱が機能したため,小指の伸展機能が保たれたと考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2004