発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2003226059
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
69歳男.右手関節部の疼痛及び腫脹を主訴とした.肺気腫,腹部大動脈瘤,左水腎症の既往があった.右手関節の単純X線像では,月状骨は殆ど骨透亮像を呈し,一部の骨皮質の消失像がみられた.CTでは月状骨の橈側の一部の残存像を認め,大半が骨吸収されていた.周囲の各手根骨には明らかな異常陰影は認められなかった.MRIでは,月状骨にT1強調画像にて低信号,T2強調画像にてほぼ等信号を示し,T1強調Gd像影像では造影効果はみられなかった.胸部単純X線像では左下肺野に大きな異常陰影を認め,胸部CTでは左下肺野に腫瘤がみられ,肺壁及び第8肋骨への局所浸潤像がみられた.右月状骨生検時の病理所見では,骨内の大部分は線維化を伴った扁平上皮細胞癌の骨転移像を呈した.左肺の生検所見では,肺胞間質の大部分は扁平上皮癌細胞の胞巣状増殖によって置換されていた.また肺胞内にも腫瘍細胞の浸潤像が認められた.渉猟し得た限り,1958~2002年の45年間で悪性腫瘍の手根骨転移報告例は17例に過ぎず,そのうち月状骨への転移を認めた肺癌の症例はわずか1例であり,本症例は稀な症例と考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2003