発行日 2013年6月1日
Published Date 2013/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013325743
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69歳女。肛門部痛を主訴とし、各種画像所見より腟後壁と子宮への浸潤を伴う下部進行直腸癌と診断して、硬膜外麻酔併用の全身麻酔下に開腹手術を施行した。腫瘍はRa、Rbに主座し、S状結腸、子宮、腟後壁に浸潤し、仙骨前面に穿通していた。S状結腸、子宮、両側卵巣、腟後壁合併直腸切断術を施行し、左下腹部にS状結腸ストーマを造設した。病理診断は高分化主体の腺癌で、Stage II、R0であった。術後2日に誘引なく胸痛、呼吸困難が出現し、X線で心胸郭比59%、両肺野に著明なうっ血を認めた。心電図では頻脈とII、III、aVF、V3~V6でSTの上昇を認め、血液検査ではCK-MB、トロポニンIが上昇していた。また、左室造影では収縮期に心尖部側の無収縮、心基部の過収縮を認めた。たこつぼ型心筋症と診断し、人工呼吸器による管理、更に輸液制限(1000ml/日)の上でdopamimne、β遮断薬、利尿剤を投与したところ、約1週間で呼吸や循環動態は安定した。発症2日後の心電図ではSTは正常化し、V3~V6でT波の陰性化を認め、この変化は発症後1ヵ月でも認めた。
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