発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013031678
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81歳女性。便秘症やふらつきほか、今回、食後に下腹の一部に膨満感を自覚、3kgの体重減少を主訴に近医を受診し、高度の貧血を指摘され、精査加療目的で著者らの施設へ紹介となった。入院時、下腹部正中に手拳大の腫瘤が触知され、腸蠕動音はやや低下していた。また、血液検査ではプロテインC活性は正常であったが、プロテインS活性は低下、腫瘍マーカーにおいては正常値であった。一方、下肢静脈超音波では右外腸骨静脈中心静脈カテーテル周囲に血栓がみられ、注腸造影ではS状結腸の完全閉塞が認められた。更に下部消化管内視鏡では肛門縁より28cmの部位に全周性完全閉塞の3型病変が認められ、胸腹部造影CTでは両側肺動脈本幹に血栓が確認された。以上、これらの所見と生検も踏まえ、本症例はプロテインS欠乏症、出血性閉塞性S状結腸癌、無症候性肺塞栓症、下肢静脈血栓症と診断された。以後、S状結腸からの出血が持続するためPCPSの準備を行いながら手術を施行したところ、腫瘍は腹壁に高度に浸潤していたが切除でき、術式はHartmann手術が行われた。その結果、術後15日目の胸部CTでは血栓は消失、経過良好で患者は術後34病日目にリハビリテーション病院へ転院となった。
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