発行日 2010年11月1日
Published Date 2010/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011034215
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70歳女性。患者は食欲不振が続き1年間に10kgの体重減少があり近医を受診、上部消化管造影で異常を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。入院時、上部消化管内視鏡では胃上部左に壁外からの圧排がみられ、表面にびらんや潰瘍は認められなかったが、腹部エコーでは左上腹部に肝臓や胃に接してやや高エコーな腫瘤が確認された。また、腹部造影MDCTでは胃体部大彎側で肝左葉外側区域背側から左横隔膜下を占拠する約9cm大の分葉状を呈する腫瘤像が認められ、加えて腹部MRIでは腫瘤はT1強調像で筋肉と等信号、T2強調像で不均一な等信号を示し、脂肪抑制併用T2強調像では著明な高信号を示した。以上、これらの所見から、本症例は肝左葉外側区域から肝外性に発育する肝血管腫と診断され、腹腔鏡下手術が行われた。その結果、術中所見では腫瘍は肝S2の下面から左肝三角間膜にかけて薄い肝実質と線維性組織を介して有茎性に肝外に突出していた。そこで、茎の部分を切離、左肝三角間膜を切離して肝切除を終了し、腫瘍をパウチに回収して摘出した。手術時間は1時間22分、出血量は18mlで、切除標本の病理組織学的所見は海綿状血管腫であった。尚、患者は手術から10日目に退院となり、その後は食欲が回復した。
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