最新癌治療 エビデンスで示す治療効果とコスト
原発性肝癌
別宮 好文
1
,
國土 典宏
1東京大学 肝胆膵外科・人工臓器移植外科
キーワード:
Cisplatin
,
Fluorouracil
,
吸収性ゼラチンスポンジ
,
Mitoxantrone
,
肝細胞癌
,
肝切除
,
腫瘍再発
,
ヨード化油
,
費用と費用分析
,
肝動脈塞栓術
,
診療報酬
,
ラジオ波焼灼術
Keyword:
Cisplatin
,
Costs and Cost Analysis
,
Fluorouracil
,
Hepatectomy
,
Carcinoma, Hepatocellular
,
Gelatin Sponge, Absorbable
,
Iodized Oil
,
Mitoxantrone
,
Neoplasm Recurrence, Local
pp.503-509
発行日 2009年5月1日
Published Date 2009/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2009185203
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインでは、肝細胞癌の治療を肝障害度、腫瘍数、腫瘍径の3因子によって図1のように設定している。したがって、大多数の症例は第一に選択すべき治療法が一つに決定される。しかし、すべての症例において適応されるとは限らない。本稿では、肝障害度がAで、腫瘍数が4個、最大腫瘍径が3cm以上の症例で、肝切除、ラジオ波焼灼術(RFA)、肝動脈塞栓療法(TAE)、化学療法を行った場合のコストを、当院で行ったそれぞれの治療法の保険点数を参考に解析した。1入院あたりの平均保険点数を比べると、肝切除はほかの治療法のおよそ2倍の費用がかかっている。しかし、1回のTAEで肝細胞癌が完全寛解することはまれで、多くの場合繰り返しTAEを行わなければならない。また、化学療法も4週間ごとに繰り返す必要がある。また、この腫瘍条件では、最大径の肝細胞癌に対して、1回のRFAで完全に治療するのは困難である。したがって、肝切除以外の治療法を選択した場合には2回以上の入院治療が必要となり、肝切除以上の費用がかかることになる。肝切除の高い無再発生存率を考慮すると、ほかの治療法に比べコストの面でも低く抑えられると考える。
©Nankodo Co., Ltd., 2009