最新癌治療 エビデンスで示す治療効果とコスト
膵癌の治療成績と診療別コスト 両者の関係を考える時期はいつか
平田 公一
1
,
木村 康利
,
信岡 隆幸
,
永山 稔
,
今村 将史
,
秋月 恵美
,
山口 洋志
,
伊東 竜哉
,
廣川 直樹
,
晴山 雅人
1札幌医科大学
キーワード:
医療費
,
抗腫瘍剤
,
所得
,
膵切除
,
膵臓腫瘍
,
放射線療法
,
予後
,
治療成績
,
費用と費用分析
Keyword:
Antineoplastic Agents
,
Costs and Cost Analysis
,
Health Expenditures
,
Income
,
Pancreatectomy
,
Pancreatic Neoplasms
,
Prognosis
,
Radiotherapy
,
Treatment Outcome
pp.510-518
発行日 2009年5月1日
Published Date 2009/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2009185204
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膵癌の治療後成績は他癌のそれに比しきわめて不良なことから、欧州では一時期において外科治療自体を避けてもよいのではないかと考える向きもあった。しかしながら、化学あるいは化学放射線療法と外科治療法の比較で後者が生命予後を改善するとのエビデンスが示されて以来、外科的切除が救命しうる唯一の治療法であるとのコンセンサスにいたり、今日、外科的切除への依存度は高い。一方、その治療法別の費用対効果を検討しようとすると、後ろ向きあるいは前向きの比較試験の実施がむずかしい状況にある疾患のため、治療法別でのデータがない。すなわち、切除可能例での化学療法単独症例群あるいは放射線単独治療症例群を対象としたエビデンスレベルIII以上の研究報告はきわめて少なく、たとえ存在してもその対象例の選択に厳密性が保たれていたかは必ずしも明確でないのが実状である。今日までの報告をみる限り、膵癌について切除、放射線治療、化学療法の3治療法間で治療後成績を加味した診療別コストを比較することは、集学的治療が強く推奨されている今日、evidence-based medicine(EBM)の面からは分析困難と理解された。
©Nankodo Co., Ltd., 2009