発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2003256675
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47歳男.工作用カッターナイフで腹部を切られ,救急搬送された.出血性ショックの状態で,上腹部に25cmの切創があり,肝,胃,大網が脱出していた.手術所見で,肝左葉から肝門部,肝右葉へと横断的な深い裂溝があり,出血していたが,出血点を特定できなかった.術中の総出血量は6000mlで,手術開始後の2時間でMAP26単位の輸血を実施しており,HtやHb量は増加したが,PLTは著しく減少し,BEも低値が持続した.このため胃壁の修復の後,肝周囲にガーゼパッキングを行って閉腹した.術後血小板20単位を輸血し,24時間後にはカテコラミンサポートなしで血圧維持が可能となった.血管造影で造影剤の血管外漏出は認めなかったが,予防的にTAEを行った.CTでは腹腔内出血は少量で,止血が示唆された.状態が安定した48時間後に再開腹し,肝門部の損傷部は十分止血されていた.胆嚢摘出後に胆道造影を行い,肝S5の切断面から造影剤の漏出を認め,結紮処理した.術後経過良好で,第30病日に独歩退院した
©Nankodo Co., Ltd., 2003