発行日 2002年11月1日
Published Date 2002/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2003116860
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60歳男性.膵頭十二指腸切除術(PD)後の縫合不全および腹腔内出血にソマトスタチンアナログが有効であった1例を経験した.発熱で近医に黄疸,乳頭部癌と診断され紹介入院した.眼球結膜および皮膚に黄染を認め,経皮経肝胆道ドレナージで減黄後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD),D2郭清を行った.術後10日目頃より各吻合部のドレーから腸液の排出を認めたが,アミラーゼ値は44100U/lであり,造影で胆管空腸吻合部の縫合不全を確認した.膵管チューブを留置しなかったためと思われた.その後ドレーンよりごく少量の出血がみられ,octreotide acetate(SMS)の皮下注を行った.投与開始直後よりドレーンおよびステントチューブからの排液量は減少し,投与終了後の瘻孔造影ではわずかに縫合不全が残存していたが,以後瘻孔は自然閉鎖した.術後第72病日,ドレーン抜去後18日目に軽快退院し,3年経過で吻合部狭窄および再発の徴候もなく健在である.本症例のような出血にはSMS投与を試みる価値があると考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2002