低侵襲心臓・大血管手術
弓部(遠位弓部)大動脈瘤に対する胸部ステントグラフト内挿術
植野 恭平
1
,
菅野 惠
,
緑川 博文
,
高野 隆志
,
渡邊 晃佑
,
滝浪 学
1総合南東北病院 心臓血管外科
キーワード:
死亡率
,
ステント
,
動脈瘤-解離性
,
血管グラフト閉塞
,
大動脈瘤-胸部
,
治療成績
,
脊髄虚血
,
ステントグラフト内挿術
Keyword:
Aneurysm, Dissecting
,
Graft Occlusion, Vascular
,
Mortality
,
Stents
,
Treatment Outcome
,
Aortic Aneurysm, Thoracic
,
Spinal Cord Ischemia
pp.41-47
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015137416
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遠位弓部も含めた弓部大動脈瘤に対する胸部ステンドグラフト内挿術(TEVAR)の初期・中期成績と、その有効性・問題点・今後の課題について検討した。対象は、上行弓部大動脈瘤(Zone分類Z0~2領域)に対しTEVARを行った49例(男性45例、女性4例、平均68.4歳)とした。早期成績は、Z0群ではtotal debranchingした症例が6例と最も多く、Z1群は全例two debranching、Z2群は8例に腋窩-腋窩-左総頸動脈バイパス(Ax-Axバイパス術)を、28例は左鎖骨下動脈(LSA)を完全ないし部分閉塞し、TEVARを行った。中期成績は死亡例で、Z0群では心不全、悪性腫瘍が各1例、Z2群では脳梗塞、悪性腫瘍、死因不明が各1例認めた。合併症はZ0群でpersistant type I EL、脳梗塞各1例を認め、Z1群では頸部再建グラフト閉塞1例を認めたが、いずれも経過観察とした。Z2群はsecondary type I ELを2例、type II ELを1例認め、1例は経過観察、1例はTEVARを追加、1例は左開胸下に下行置換術を施行した。以上の結果より、TEVARは大動脈瘤の治療法として有用である。一方問題点は、屈曲した弓部に対し、いかに十分なランディングゾーンを確保することや、脳血管分枝血流の保護をどうするかである。今後の課題として、現時点では安定した成績であるため、外科的リスクの高い患者を対象とすべきである。
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