発行日 2014年4月1日
Published Date 2014/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2014177010
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
17歳女。幼児期に肺炎、小学校時より副鼻腔炎を繰り返していた。今回、半月前より発熱、左胸痛、咳嗽が出現して近医を受診、抗生物質による治療が行われたが改善せず、著者らの施設へ紹介となった。所見では炎症反応の亢進がみられたほか、胸部X線では両下肺野の浸潤影と左胸水が、CTでは右中葉に浸潤影と少量の左胸水、更に右中葉内部には気管支拡張が認められた。以上、これらの所見を踏まえて、本症例は左肺炎とそれに伴う肺炎随伴胸水と診断され、ampicillen、sulbactam(ABPC/SBT)による治療が開始されたが、胸水と炎症反応の増加を認めたためmeropenem(MEPM)へ変更した。一方、胸腔穿刺により黄色透明な胸水の吸引が行われたが増悪し、呼吸困難も出現、CTで左胸腔内に多房性の胸水を多量に認め、急性膿胸が疑われ、胸腔鏡下醸膿胸膜切除術が施行された。手術は胸腔内に大量の淡血性胸水が醸膿胸膜を隔壁として多房性に貯留するそれらを剥離・摘出し、次いで左上葉舌区に壊死穿孔した部位を部分切除、胸腔内を洗浄後にドレーンを留置した。その結果、胸水細菌培養は陰性で、術後4病日目まで胸腔洗浄してドレーンを抜去した。尚、患者は第14病日目に退院となったが、電子顕微鏡を行なったところ、鼻粘膜生検線毛の内側ダイニン腕の欠損が認められ、このことから幼少期に繰り返した症状を原因とする原発性線毛機能不全症(PCD)と診断された。目下、Clarithromycinや去痰薬の内服が継続されているが、気道感染は繰り返されている。
©Nankodo Co., Ltd., 2014