胸壁・横隔膜の手術-その1 胸壁再建法
難治性胸壁潰瘍に対する自家組織を用いた胸壁再建術
平塚 昌文
1
,
岩崎 昭憲
1福岡大学 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科
キーワード:
自家移植
,
潰瘍
,
胸部外科
,
胸部疾患
,
乳房腫瘍
,
放射線障害
,
放射線療法
,
網
,
筋皮弁
,
腹直筋
,
胸壁
,
胸部CT
Keyword:
Breast Neoplasms
,
Omentum
,
Radiation Injuries
,
Radiotherapy
,
Ulcer
,
Transplantation, Autologous
,
Thoracic Diseases
,
Thoracic Surgical Procedures
,
Thoracic Wall
,
Myocutaneous Flap
pp.44-47
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2014106928
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67歳女性。40歳時に左乳癌の診断を受け、左胸筋温存乳房切除術と術後に左前胸壁の放射線治療が行われた。しかし、63歳頃より左前胸壁に潰瘍が形成され軽快と再燃を繰り返し、加えてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による局所感染を合併して難治性のため。今回、著者らの施設へ紹介となった。入院時、左前胸部に瘻孔と潰瘍形成を伴った広範囲の皮膚壊死が認められ、胸部CTでは潰瘍底部の胸腔内への連続が疑われた。また。肺動脈が胸壁に接しており、炎症の波及による出血も危惧された。そこで、広範囲な皮膚壊死部分と腐骨化した肋骨を含めた骨性胸郭切除と、再建は感染巣があるため生体材料を使用する方針とした。術中所見では壊死した皮膚を含め多広範囲な皮膚切除が行われたが、左第2・3肋骨は一部腐骨化しており、これを切除、更に周囲の壊死・感染組織を十分デブリドマンした。一方、再建手術は上腹壁動静脈を温存した有茎縦軸腹直筋皮弁を利用し、感染の再燃が起こった場合、胸膜に接する肺動脈へ炎症が波及し大出血となる可能性を考慮して左胃大網動静脈を栄養血管とした有茎大網弁を作成、筋皮弁直下胸壁に固定した。その結果、術後は感染徴候もみられず良好な皮弁の生着を認め、術後1ヵ月経過で独歩退院となった。尚、術後3ヵ月目の造影CTでは大網の栄養血管の左胃大網動脈の血流も確認できた。
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