発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008148985
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
72歳女。23年前に左乳癌に対し胸筋合併乳房切除術および術後放射線治療が施行されており、1年前から喀血が繰り返された。胸部CTにて左肺上葉は著明に萎縮し、縦隔側に気管支拡張像を認め、周囲に浸潤影がみられた。気管支動脈造影では左上葉縦隔側の気管支動脈は発達し、肺静脈へのシャントがみられた。スポンゼル細片を用いて選択的に気管支動脈塞栓術を施行、陳旧性心筋梗塞を有していたが冠状動脈病変や心機能の検査から耐術可能との判断で、6日後に左上葉切除術を施行した。摘出標本で外側では一部健常肺が残存していたが、縦隔側は高度に虚脱・萎縮していた。割面では縦隔側の萎縮肺と健常肺の境界は明瞭で、解剖学的な構築とは異なっていた。病理組織像で萎縮した部位では炎症所見はなく、気管支動脈が発達していた。術後経過は良好で、術後10日目に退院となった。検索の範囲において、胸部への放射線照射部位が喀血の原因となった症例は、肺癌の放射線治療後の肺線維症の部位から喀血し、保存的に軽快した例以外に報告は認められなかった。
©Nankodo Co., Ltd., 2008