発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006302209
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術後急性期に肺血栓塞栓症(PTE)を発症した6例(症例1:60歳女,症例2:69歳女,症例3:80歳女,症例4:75歳女,症例5:69歳女,症例6:77歳男)を対象とした.手術対象疾患は原発性肺癌5例,転移性肺腫瘍1例であった.手術からPTE診断までの日数は2~7日(平均4日)で初期症状としては突然のSpo2低下と頻脈が共通して見られ,O2投与による改善は見られなかった.急性期の治療では全例にheparin sodium投与を行い,活性化全血凝固時間(ACT)を180~220秒となるよう投与量を調節した.症例3・4は症状が重篤でさらにウロキナーゼを投与し,症例3は硬膜外麻酔カテーテル抜去の際,抗凝固を一時中止する必要から,一時留置型下大静脈フィルタ留置を行った.症例4は呼吸循環不全が急速に進行し,経皮的心肺補助装具(PCPS)を使用下にカテーテルによる経皮的血栓破砕吸引術を施行した.慢性期治療として症例1でアスピリン,症例5・6はwarfarin potassiumの投与を行いPT-INR1.5~2.5となるよう内服量を調節し,6ヵ月間内服を継続した.肺葉切除後の症例4は血栓溶解療法に伴う大量出血により,播種性血管内凝固(DIC)症候群,多臓器不全(MOF)を発症し死亡,他の5例は発症後2年の経過観察中でPTEの再発は認められなかった.PTEの救命には早期診断がきわめて重要であり,初期症状を見逃すことなく診断し,早期に治療を開始すれば肺悪性腫瘍手術後の低肺機能患者に対しても抗凝固療法のみで良好な予後を得ることができると考えられた.また,診断には胸部造影CTが有用であった
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