特集 活性イオウ分子種の生理機能に迫る チオールバイオロジーの新たなステージ
せるてく・あらかると
内因性親電子シグナルと遺伝子発現の新しい関係を求めて
本橋 ほづみ
1
1東北大学加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野
キーワード:
Formaldehyde
,
Glutathione
,
遺伝子発現
,
薬物代謝性解毒
,
NF-E2-Related Factor 2
,
DT40細胞
,
Kelch-Like ECH-Associated Protein 1
,
生体防御
,
ADH1C Protein
Keyword:
Kelch-Like ECH-Associated Protein 1
,
Formaldehyde
,
Glutathione
,
Inactivation, Metabolic
,
Gene Expression
,
NF-E2-Related Factor 2
,
ADH1C Protein, Human
pp.364-365
発行日 2015年3月22日
Published Date 2015/3/22
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- 文献概要
生体が,様々な生命活動を維持するには,自由エネルギーの持続的な取得が必要である.生化学の教科書によれば,生体が生命活動に必要な自由エネルギーを取り入れて利用するプロセスを代謝と呼び,自由エネルギーを取り出す過程は異化,生体分子を合成する過程は同化として区別されている.一方,代謝中間体が,自由エネルギーのやり取りとは必ずしも直結しない生命活動に重要な役割を果たしていることも明らかにされている.クエン酸回路の中間体である2-オキソグルタル酸は,低酸素応答の鍵因子であるHIF因子群の活性制御や,コラーゲンタンパク質の成熟,ヒストンやDNAの脱メチル化などに重要な役割を果たしている.同じくクエン酸回路の中間体であるフマル酸は,その親電子性により,様々なタンパク質のシステイン残基に共有結合し,サクシネーション(succination)と称される新しい翻訳後修飾をもたらすことが報告されている.このように,代謝中間体とタンパク質機能との新しい関係の解明から,生命活動における「代謝」の意義が見直され始めている.
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