特集 活性酸素シグナル制御とレドックスホメオスタシス
Cell Tech Eye SNO化制御の破綻と疾患
松本 明郎
1
1千葉大学 大学院医学研究院薬理学
キーワード:
Cysteine
,
シグナルトランスダクション
,
ニトロソ化
,
Nitric Oxide Synthase
,
一酸化窒素
,
S-Nitrosoglutathione
,
生理的ストレス
,
Glutathione-Independent Formaldehyde Dehydrogenase
Keyword:
Cysteine
,
Nitric Oxide
,
Stress, Physiological
,
Signal Transduction
,
Nitrosation
,
Nitric Oxide Synthase
,
S-Nitrosoglutathione
,
Formaldehyde Dehydrogenase, Glutathione-independent
pp.171-172
発行日 2012年1月22日
Published Date 2012/1/22
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- 文献概要
一酸化窒素(NO)は生体内でNO合成酵素(NOS)により産生された後,様々な生体内物質と相互反応することにより生理作用を示す.例えば,鉄などの遷移金属を持つタンパク質(ヘモグロビンや可溶性グアニル酸シクラーゼ)への配位結合は,NOの生理機能を調節する重要なメカニズムとして理解されている.さらに,核酸やアミノ酸へのニトロ化修飾は炎症性病態や遺伝子変異・発癌などの病態形成への関わりから研究が進められてきた.一方,恒常的に産生されるNOは生理機能の維持に関わり,発生段階においても必須の因子である .これらの生理的なNOの作用は,主にシステインチオール基に対するニトロソ化(SNO化)反応による酵素活性の可逆的な制御によっていることが明らかにされてきた.NOの標的とされるタンパク質分子のシステインチオール基は,立体構造上における配置や周囲を取り囲むアミノ酸配列により規定されるpKa や疎水性,さらには他のタンパク質(主にNOS)やアミノ酸との結合しやすさにより特定される.これらの規定因子の存在から,SNO化修飾の起こりやすさにも違いが生じることが予見される.実際,生理的な低濃度のNO曝露により常に生じているSNO化修飾(例えばPTEN)から炎症やNO産生細胞の接近による高濃度のNO曝露によらなければ形成されないSNO化修飾(Akt)まで存在する(鎌田氏らの稿参照).
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