すとらびすむす
AI,放射線診断の救世主あるいは征服者
栗山 啓子
1
1国立病院機構大阪医療センター放射線診断科
pp.379-379
発行日 2019年3月25日
Published Date 2019/3/25
DOI https://doi.org/10.15105/GZ.0000001089
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今や猫も杓子も人工知能(articial in tel ligence;AI)だが,意外と歴史があり,第一次ブームが1900 年代後半,第二次が2000 年代,そして2010 年代後半がディープ・ラーニングの活躍で言語や画像の世界を巻き込んだ第三次ブームである.臨床レベルで診断支援や自動診断が使え,放射線診断学にも本格的AI ブーム到来である.AI で画像診断がおもしろくなるという時期に,放射線科志望者が日本だけでなく北米でも減少したようである.一因は,医療系ジャーナリストがAI の登場で将来性のない診療科として放射線科を挙げたことによる風評被害だったようである.私のような昭和からの放射線診断医は,CT が登場した頃に同じような騒ぎがあったことを思い出す.歴史は繰り返す,それは直線でも円でもなく,時間を軸にスパイラル状に進む.ほぼ半世紀前には頭蓋内病変の診断はイオン性造影剤による血管撮影が主流であった.ところが1970 年代にCT(英国EMI 社)が開発され,1975 年にエリザベス女王が日本を訪問された際に「貿易摩擦解消に導入してはいかが?」との一声で日本第1 号機(1 台1 億円:現在の10 億円相当)が輸入された.このCTは解剖アトラスのように脳内を明瞭に描出し,「医師ならだれでも頭蓋内病変の診断ができる.もう神経放射線科医はいらない」といわれたほどであった.結果は,専門医の需要がさらに増し,まさに風評の真逆となった.今後AI による自動診断が満足できる水準を満たしても,診断の結果次第でエキスパートへのコンサルテーションの需要が増加すると思われる.まさに,心電図の自動診断のようにである.
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