画像診断 39巻5号 (2019年3月)

特集 肺に淡い陰影が広がっていたらどう診断するか?

序説 楠本 昌彦
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物事を完璧に理解できることは素晴らしい.しかし,すべてのことがすんなりと完璧に理解できるかといえば,そうではない場合もある.特に対象物が複雑でかつ曖昧なものが多い場合,細かい理解はもちろん,本筋となる事柄の理解も難しい場合がある.ましてや類似の事柄との区別識別は困難を極める.肺に淡い陰影が広がっていたらどう診断するか?ここでいう淡い陰影とは,“もわっとした”,あるいは“ふわっとした白っぽい影”が,肺にみられる状態を指す.多少濃くても,淡くても構わない.均一であっても,不均一であっても構わない.淡い陰影には,すりガラス影が含まれるが,必ずしもすりガラス影には限定しない.白っぽい影が大きく広がっていても,小さな淡い影がたくさんみられる場合も含まれる.言葉で表現することが難しい陰影もある.このような陰影をみた時,放っておいていいのか,抗菌薬や抗生剤を投与するのがいいのか,ステロイドを投与すべきなのか,水を抜くのか,そんな道しるべを画像に求められることがある.その上で,この病態が治療に反応して元通りになることが期待できるのか,治療しても傷跡のようなものを残して安定した状態になることが予想されるのか,あるいは有効な治療が見込めず,もうどうしようもないのか示すことができれば,患者のマネージメントに役立つ.

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すりガラス影は,薄層CTにおける淡い吸収値上昇の所見を指す.病理学的には,主に肺胞隔壁の肥厚と肺胞腔の不完全な充満を反映している.すりガラス影を呈する疾患は多岐にわたり,画像のみでの鑑別が困難な場合が少なくない.CT halo signやcrazy-paving appearanceなどの特徴的な所見による疾患の絞り込みや,各疾患の臨床病理学的特徴にも精通することが必要である.

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本稿では,間質性肺炎におけるすりガラス影について,通常型間質性肺炎(UIP),非特異性間質性肺炎(NSIP),びまん性肺胞傷害(DAD)を取り上げて解説する.また,これらの間質性肺炎に対し,CTにおける鑑別点を挙げ,診断上参考となる臨床的事項について述べる.

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CTで,すりガラス影主体の所見を呈する場合,ウイルス性肺炎は頻度が高い肺感染症のひとつとして常に考慮する必要がある.免疫不全患者ではニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎が代表的な疾患であり,しばしば鑑別が問題となるが,特徴的なCT所見および他の臨床情報を併せて診断することが重要である.

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好酸球性肺疾患や過敏性肺炎は,発症にアレルギーが関与する肺疾患である.急性好酸球性肺炎や慢性好酸球性肺炎,急性過敏性肺炎のように典型的な画像所見が知られているものや,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症や慢性過敏性肺炎などの多彩な画像所見を呈するものがある.病歴や臨床像も診断に重要であり,画像所見と臨床情報を併せて検討することが大切である.

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すりガラス影の鑑別診断のひとつに,循環障害に伴う肺水腫(静水圧性肺水腫)が挙げられる.鑑別点としては小葉間隔壁肥厚や小葉内網状影,気管支血管束肥厚の併存,肺門側や荷重部優位の分布,心拡大,胸水,心嚢水の存在,速い経過が重要である.本稿では,静水圧性肺水腫の画像所見と,その成り立ちについて概説する.

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薬剤性肺障害の特徴的な画像所見は,両側性のびまん性,または斑状の広範なすりガラス影とコンソリデーションである.非区域性分布を呈し,すりガラス影内に網状影や牽引性気管支拡張が認められる場合もある.まずは薬剤性肺障害を疑い,他疾患を除外した上で,医療面接・検査結果と画像診断を総合して診断していく必要がある.

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肺に淡い陰影,すなわちすりガラス影が広がる病態は多岐にわたる.腫瘍ないし腫瘍類似病変,リンパ増殖性肺疾患,肺胞腔内の物質貯留,肺胞隔壁/ 間質への物質沈着のほか,吸入などに伴う化学性肺炎/ 急性肺傷害なども重要な疾患である.病変のみならず吸気不十分が,すりガラス影の成因となることも忘れてはいけない.

すとらびすむす

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今や猫も杓子も人工知能(articial in tel ligence;AI)だが,意外と歴史があり,第一次ブームが1900 年代後半,第二次が2000 年代,そして2010 年代後半がディープ・ラーニングの活躍で言語や画像の世界を巻き込んだ第三次ブームである.臨床レベルで診断支援や自動診断が使え,放射線診断学にも本格的AI ブーム到来である.AI で画像診断がおもしろくなるという時期に,放射線科志望者が日本だけでなく北米でも減少したようである.一因は,医療系ジャーナリストがAI の登場で将来性のない診療科として放射線科を挙げたことによる風評被害だったようである.私のような昭和からの放射線診断医は,CT が登場した頃に同じような騒ぎがあったことを思い出す.歴史は繰り返す,それは直線でも円でもなく,時間を軸にスパイラル状に進む.ほぼ半世紀前には頭蓋内病変の診断はイオン性造影剤による血管撮影が主流であった.ところが1970 年代にCT(英国EMI 社)が開発され,1975 年にエリザベス女王が日本を訪問された際に「貿易摩擦解消に導入してはいかが?」との一声で日本第1 号機(1 台1 億円:現在の10 億円相当)が輸入された.このCTは解剖アトラスのように脳内を明瞭に描出し,「医師ならだれでも頭蓋内病変の診断ができる.もう神経放射線科医はいらない」といわれたほどであった.結果は,専門医の需要がさらに増し,まさに風評の真逆となった.今後AI による自動診断が満足できる水準を満たしても,診断の結果次第でエキスパートへのコンサルテーションの需要が増加すると思われる.まさに,心電図の自動診断のようにである.

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1歳7か月の女児.喘鳴あり,他院小児科外来を受診.胸部単純X線写真で腫瘤陰影を認め,CTでは前縦隔右側に最大径8cmの腫瘤を認め,気管分岐部から右主気管支が圧排されていた(非提示).緊急手術のため当院小児外科を紹介受診.血液検査ではAFPやβHCG,CEAは正常値であったが,CA19-9が79U/ml(正常は37U/ml以下)に上昇していた.CTでは前縦隔から右胸腔に突出する径8cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.内部には粗大な脂肪組織や軟部影,嚢胞成分,成熟骨などが散見された.成熟成分主体の成熟嚢胞性奇形腫が疑われた.腫瘤の頭側や尾側に均一な性状の軟部影を認め,圧排された胸腺組織が疑われた.胸水は認めなかった.腫瘤により縦隔は左方に圧排されており,腫瘤と右内胸動静脈,左腕頭静脈,右腕頭動脈,右鎖骨下静脈~上大静脈,右肺動脈は広く接し,圧排性変化を認めたが,明らかな浸潤は認めなかった.CA19-9は術後に正常値まで低下した.

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“器質化肺炎”という用語が度々出てきましたが,この章でいう器質化肺炎は,いわゆる特発性間質性肺炎のOPパターンではなく,肺炎などが治癒する過程で線維化してくる状態のことでしょうか?

dissociated responseは臓器によって特定の傾向があるのでしょうか?

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● 救急外来では,整形外科外傷患者の骨折の見落としは少なくない.

● 適切な単純X 線写真を撮像するために1/3 ルールを覚えよう.

● 単純な単純X 線写真のみでは見落とす可能性がある骨折を知ろう.

Picked-up Knowledge from Foreign Journals

子宮頸癌 高濱 潤子 , 吉川 公彦
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分葉状子宮頸部腺過形成(lobularendocervical glandular hyperplasia;LEGH)に生じた子宮頸部腺癌:MRIと病理所見の比較

子宮頸部原発神経内分泌癌のMRI所見と病期診断:病理所見との比較

子宮頸癌,傍組織浸潤のMRI診断能:システミックレビュー,メタアナライシス(2012~2016)

子宮頸癌の傍組織浸潤(StageⅠB1,ⅠB2,ⅡA):3T MRIで撮影したT2強調像と拡散強調像の診断能

CASE OF THE MONTH

Case of April 神田 知紀
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60歳台,男性.主訴:繰り返す鼻出血.現病歴:半年前から鼻出血にて,近医受診.鼻腔入り口部に腫瘤を認め,生検したが炎症性ポリープの診断であったため,対処療法を行っていた.CTを撮影すると骨破壊を伴った腫瘍を認め,当院受診となった.

解答応募用紙は,https://gakken-mesh.jp/html/pc/pdf/case-web.pdf からダウンロードできます.

The Key to Case of February 田中 宇多留
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40歳台,女性.主訴:症状なし.現病歴:子宮癌検診目的で前医受診した際に骨盤内腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院婦人科に紹介となった.既往歴:特記すべき事項なし.

General Radiology診断演習

Where are you from? 黒川 遼 , 中井 雄大
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4か月前より体幹部中心の紅皮症が出現.外用ステロイド治療にて一度は改善するも,再度増悪して顔面にまで皮疹が出現し,悪寒と熱感を伴ったため他院皮膚科にてプレドニゾロン内服治療が使用され,さらに精査・加療目的に当院へ紹介された.以下はそれから約3週間後の胸腹骨盤部単純CTである.

他科のエキスパートにお尋ねします−ここを教えていただけますか?

膵臓編 花田 敬士 , 蒲田 敏文
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早期膵癌の定義および危険因子を教えてください.

早期診断された膵癌の画像所見について特徴を教えてください.

CT/MRIなどの画像で腫瘤が認められないが,膵管に異常を認める場合の診断法は?

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膵の充実性腫瘍は頻度の低いものから高いもの,悪性度の低いものから高いものまで多彩であり,CTおよびMRIによる画像診断は治療方針を決定する際,非常に重要である.しかしながら,画像所見もそれぞれ多彩であり,往々にして質的診断に苦慮する.正確な診断を下すには,それぞれの臨床および画像的特徴を熟知することが必要となる.本稿で膵充実性腫瘍の特徴的画像所見を学ぶことにより,実際の臨床に役立てていただきたい.

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39巻5号 (2019年3月)
電子版ISSN:2432-1281 印刷版ISSN:0285-0524 学研メディカル秀潤社

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