特集 ナノDDS革命:革新的ドラッグデリバリーシステムが難治疾患治療に光をもたらす
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西山 伸宏
1
,
片岡 一則
2
1東京工業大学資源化学研究所 高分子材料部門 教授
2東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻/医学系研究科疾患生命工学センター 臨床医工学部門 教授
pp.926-928
発行日 2015年9月22日
Published Date 2015/9/22
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DDSは,薬物などの生理活性物質を「必要な時に,必要な場所で,必要な量だけ作用させる」ことのできる薬物治療の理想的な形態として,これまでに著しい発展を遂げてきた.なかでも,抗がん剤などの毒性の高い薬物を患部に選択的に送達することによって,効果に優れ,副作用の少ない治療の実現を目指すDDSは,ターゲティング型DDSと呼ばれている.この概念の歴史は古く,紀元前400年に「医学の父」として知られる古代ギリシャの哲学者ヒポクラテスが「本当に良い薬は効いて欲しいところだけに効く薬である」と書物に残している.この概念を具体的に体現したのが,P. Ehrlichの魔法の弾丸(magic bullet)である.1970年代半ばにドイツの高分子科学者H.Ringsdorfによって提唱された高分子医薬モデルでは,ターゲティング型DDSの設計においてキャリア材料としてふさわしい要件をわかりやすく示している .その後,高分子-薬剤コンジュゲート2),ポリエチレングリコール(PEG)修飾型リポソーム,高分子ミセルが開発され,現在までに,リポソーム製剤の一部がすでに実用化され,高分子ミセルは臨床試験の最終段階(第Ⅲ相試験中)にある.
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