第1特集 教科書通りにいかない心不全診療
心不全ガイドラインとプライマリ・ケアでの実践
ガイドラインを“活かす”地域心不全診療
-単なる遵守ではなく,現場で応用する視点
官澤 洋平
1
1神戸大学医学部附属病院 総合内科
pp.488-493
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2026040010
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はじめに
「心不全診療ガイドラインは通読しましたか?」
この問いかけに,多少の後ろめたさを覚える医療者は少なくないだろう.最新版の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』1)は情報量が多く,循環器専門医であっても,すべてを把握することは容易ではない.ましてや,外来・在宅・急性期対応を並行して担うプライマリ・ケア医にとっては,必要な部分を拾い読みするのが現実的である.しかし,本稿で問題にしたいのは「読めていないこと」そのものではない.むしろ重要なのは,ガイドラインがどのように活用されているかである.
心不全は,単一の臓器疾患ではなく,慢性経過のなかで増悪と安定を繰り返し,専門医療機関・かかりつけ医・生活の場を行き来する疾患である.にもかかわらず,ガイドラインが「専門医のための治療選択アルゴリズム」としてのみ受け取られてしまうと,プライマリ・ケア医と循環器医の間に見えない断絶が生まれてしまう.ガイドラインは守るための規範である以前に,異なる立場の医療者が同じ患者像を語るための共通言語である.本稿ではガイドラインのなかから,とくに地域連携・院内連携を進めるうえで「共有しておきたい」図表や概念を取り上げ,それらをどのように現場で活かすかを考えてみたい.

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