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はじめに
心不全患者の再入院率が高いことは米国の声明で指摘されており1),心不全患者の繰り返す再入院は世界共通の医療問題である.わが国は空前の高齢社会を迎え,心不全患者の数は増加の一途を辿っている2).心不全患者の慢性期管理は,今や重大な医学的かつ社会的課題となっている.慢性心不全は,服薬アドヒアランスの悪化,生活習慣の乱れ,過労やストレスなどの生活環境因子が引き金となって急性増悪する難治性の病態である.したがって,頻回入院を避けるため,日常生活におけるきめ細やかなサポートが望まれる.しかしながら,急性期治療を行った医療機関では人員や入院期間の制約もあり,十分な対応が難しいという現実がある.
急性期を脱した後の慢性期管理は,回復期医療機関,福祉施設,自宅などで行われる.慢性心不全患者の再増悪予防のためには,医学的な薬物・非薬物治療に加え,運動療法,食事療法,患者自身の生活是正と自己管理支援,周囲の見守りを強化する環境社会支援などによる「減負荷療法」が重要となる.単独職種だけでそれらすべてを遂行するのは至難の業であり,かかりつけ医(循環器領域以外を専門とする医師を含む)に加え,かかりつけ薬剤師,訪問看護師,介護福祉士など,患者にかかわるさまざまな職種を巻き込んだ地域ぐるみの慢性心不全管理が必要である.
広島県では,心不全患者の生活の質(quality of life;QOL)改善と増悪予防を目指す事業に地域を挙げて取り組んでいる.本稿では急性期医療機関とその周辺地域の施設を巻き込んだ慢性心不全患者の多職種包括ケアを紹介し,本邦が直面する医療事情を踏まえた,「あるべき慢性心不全マネジメント」について考察する.
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