特集 明日から始める!ジェネラリストのための転倒予防アプローチ
○○から考える転倒予防
脳から考える転倒予防
北村 立
1
1石川県立こころの病院
pp.1226-1229
発行日 2023年10月1日
Published Date 2023/10/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023100009
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はじめに
認知症者の転倒は,医療現場でも介護現場でも日常的に遭遇する問題であり,どの施設 でも頭を悩ませている.しかし認知症者の転倒予防のシステマティックレビューなどを検 討しても,介入方法の基準や標準化は明確でなく,結果の再現性が乏しいとされ1),決定 的な転倒予防策はない.日常臨床での認知症者の転倒予防を考えたとき,まずは薬剤の影 響が思い浮かぶ.最近のオレキシン受容体拮抗薬の普及により,転倒もせん妄も減少して いると思われ,認知症に限らず,高齢者に対してはベンゾジアゼピン系薬剤を極力使用し ないことが肝要だが,これについては別項で論じられるだろう. 牧迫はその総説2)で,施設入所者のうち認知症者はそうでない者より転倒の発生率が高 いこと,外来患者の調査で,認知症者では12 ヵ月間で転倒リスクが7.5倍になることを 紹介している.このように認知症者が転倒しやすいことは明らかなので,われわれ臨床家 は認知症者に対し,処方内容を整理するとともに,筋力や栄養状態,視力や聴力,整形外 科的な諸問題について総合的に評価しておく必要がある.他方,認知症のなかでもとくに 転倒しやすい認知症が存在するので,それを知ることは認知症者の転倒予防を考えるうえ で重要である.本稿では,まずアルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)の臨 床経過を説明し,転倒リスクの面からも考察する.ついで実際の症例を提示し,転倒しや すい認知症性疾患の理解を深める.なお症例提示にあたっては石川県立こころの病院倫理 委員会の承認を得た(承認番号2023-07).
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