特集 とことん深めるライフストーリー 職業編
身体所見から仕事を妄想しよう
声を使う職業の方の音声障害
小川 真智子
1
1石川県立中央病院 耳鼻咽喉科
pp.1137-1140
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023090022
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はじめに
音声はコミュニケーションにおいて重要である.とくに芸術家や保育園・幼稚園・学校 の先生,僧侶,営業職など,声を仕事で使う音声酷使者においては音声障害が仕事に深刻 な影響を及ぼす.高齢者においても音声障害によりコミュニケーションが取りづらくなる と,社交場からの隔離を余儀なくされる場合もある.また,高齢者の音声障害の原因に多 い声帯萎縮・反回神経麻痺などでは声門閉鎖不全となるため,誤嚥にもつながる.音声は 患者の社会生活の維持やQOLの向上,健康長寿を目指すうえできわめて重要である. しかし,日本において音声障害の診断・治療ができる医療施設は非常に少なく,音声医 学の発展により治せる疾患が増えてきたにもかかわらず,適切な医学的介入がなされない まま声の改善を諦めてしまう患者が多いのが現状である. 音声医療を享受しやすい体制の構築のためには,領域を超えて音声障害が広く認知され ることが必要不可欠である.とくに職業的に声を酷使する方々にとって適切な医療を享受 できないことは,職業継続を困難にさせるため,医療者側から治療への道筋を示す必要が ある. 本稿では,音声障害の症状や病態,紹介先,治療法について解説する.本稿により1人 でも多くの先生方に音声障害について知っていただけたら幸甚である.
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