病態に応じた対応―職業歌手の音声障害

はじめに

　職業歌手にとって声帯は最も重要な楽器であり，その手入れや維持にはひときわ神経を使うものである。ひとたび思ったように歌えなくなるとわれわれ耳鼻咽喉科を訪れるが，歌手の取り扱いは決して容易でなく，世界的にみても音声に関わる国際学会では必ずトピックとして登場するものである。もし苦手意識があるとすれば，それは歌唱の生理をよく理解していないからであり，これを熟知すればまったく難しいものではない。