特集 勞働衞生最近の進歩
職業性皮膚障害
野村 茂
1
1信州大学医学部衛生学教室
pp.44-48
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201483
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
特定の職業に従事することによつてひきおこされ,その職業に携わる全ての者が罹患し得るような疾患を職業病と云うが,その中で,主たる病変は皮膚に見出すものを職業性皮膚疾患と云つている。臨床医学では,かかる疾患について,職業性皮膚病,職業性皮膚炎,職業性湿疹,工業皮膚炎,工業湿疹等々の用語が屡々用いられているが,私は従来,労働衞生の立場から,より総括的な職業性皮膚障害という語を用いてきた。ここに掲げた諸表にみられるように,職業に起因する皮膚の諸変化には,炎症性病変が多くを占めるが,皮膚癌の如き増殖性病変もあり,色素異常,血行異常等を主徴とするものもあり,更に又,ベンゼン中毒の皮下出血,タリウム中毒の脱毛の如く,毒物吸収による工業中毒の部分症状の一つとしての皮膚所見をも見逃すことができないからである。厳密な意味に於ては,災害性におこる火傷,酸,アルカリ腐蝕症の如き偶発的疾患は職業病として取扱うべきではないのであるが,我国産業界の現状に於ては,むしろかかる災害性の皮膚障害の多発が表面にでており,これを除外することはできない。従つて,現実にはかかるものをも含めて,業務上疾患とみなされる皮膚の病変一般を広義の職業性皮膚障害として取扱う場合も屡々であるのが現状である。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.