特集 発達障害×慢性疾患
発達障害×慢性疾患 ケースレポート
自閉スペクトラム症×在宅介護
横谷 省治
1,2
1筑波大学 医学医療系地域総合診療医学
2北茨城市民病院附属家庭医療センター
pp.956-960
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023080005
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ASDは,言葉や感情の交流を通して他者との関係を築くことの難しさ,社会的状況に合 わせた行動をとることの難しさ,興味や活動の限局(こだわり)といった特性を有する発達 障害である.感覚過敏や協調運動の不器用さなどの症状を伴うこともある.全世界での有 病率は1,000人あたり7.6人と推計され,地域差はほとんどないとされる2).ASDの特性 は乳幼児期に明らかになり,その後も成人期まで継続する.知的能力障害が併存する場合 は自閉性も強い.一方で平均知能を有する高機能ASDでは,乳幼児期から症状が存在し ていても,親や周囲の気づきや受診につながりにくく,診断が遅れがちである.ASD症状 やASD的行動特性の程度の分布は定型発達児とASD児まで連続的で,両者を区別できる ようなギャップはないことがわかっている3).すなわち,診断閾下のASD特性をもってい る定型発達者もいることを表している.ASD閾下ケースのなかには,ASD診断ケースと 変わらない程度に社会生活上の困難を抱えている場合もまれではなく,ASD特性について 配慮が望まれる人の数は,ASDの有病率から推計されるよりも多いと考えられる.
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