特集 患者の不安をやわらげるクリニカルスキル
やわらげるスキル
「もう死にたい」と言われたら ─ 再び「生きると向き合う」─
今村 弥生
1
1杏林大学医学部 精神神経科学教室
pp.744-748
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023060012
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はじめに
自殺既遂者の大半に精神疾患,とくにうつ病を含む気分障害を多く合併し,うつ病患者 の多くがまず受診するのは,内科など精神科以外の診療科であることは広く知られている. さらに,それまで精神疾患の既往がない人でも,悪性腫瘍の治療の苦痛や,疼痛や身体の 機能障害を伴う慢性疾患によって希死念慮が生じ,主治医に胸の内を打ち明けることは, プライマリ・ケア領域においても想定される.この状況を踏まえて,筆者らは「生きると 向き合う」と題して,プライマリ・ケア領域においても避けられない自殺対策について, 内科を専門とする家庭医をはじめ,外科医,精神科医,精神保健福祉士,弁護士による論 考に加えて,自死遺族の方からも寄稿をいただき,2017年に成書にまとめた1).この過 程で多くのことを学んだとはいえ,筆者はいまだに自殺に気持ちが傾く人へのケアが十分 できるようになったとは言い難いのだが,同書をもとに,身体疾患の治療のなかで「死に たい」と言われたときの心構えと,かけるべき言葉について,再び向き合いたい.
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