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はじめに
「なんで風邪くらいで受診するんだろう.風邪薬なんてどうせ効かないのになあ」そう思って診療していないだろうか? 忙しいときや当直中の眠いときなどはとくにそう思うかもしれない.後述するように風邪薬のエビデンスはほとんどないのが事実だが,保護者は「咳がひどくてもどしてしまう」,「鼻が詰まって眠れない」などに苦しむわが子を何とかしてあげたいと思って受診しているのである.このようなときに,単に「風邪です.薬はありません」という対応をするとどうなるのだろうか?
その答えとなる臨床研究を紹介する.それは,アメリカで実施された抗ヒスタミン薬と充血除去薬の合剤の効果を調べるため,実薬群,プラセボ群,無治療群の3群に分けたランダム化比較試験である1).どの群も改善の割合に差はなかったが,他院やドラッグストアで風邪薬を手に入れて内服した割合は実薬群10%,プラセボ群0に対して,無治療群では30%であった.つまり,単に「薬はありません」という対応をすると,他院やドラッグストアに行ってしまうのである.そのようにしないためには,納得して帰宅していただく必要がある.
市販の風邪薬でよいのではないかと思われる方もいるかもしれない.しかしながら市販薬は「2歳未満の乳幼児には,医師の診療を受けさせることを優先し,止むを得ない場合にのみ服用させること」と記載するよう厚生労働省から指示されている.加えて,小児用の市販薬はイチゴなどさまざまな味つけで飲みやすくしているため,過量投与の事故が絶えない.このように,市販薬でよいわけではなく,むしろ診察時に服用していたと聞いたときには,危険性についての情報提供を行い,原則使用しないよう指導すべきである.
ではどのような対応がよいのだろうか? 筆者自身もまだまだ模索中で日々試行錯誤を重ねているが,現時点で筆者が行っている風邪症状患者への対応を紙面上で再現してみる.
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